【2025注目の逸材】
たけぞえ・らい
竹添來翔
[大阪/新6年]
しんげ
新家スターズ
※プレー動画➡こちら
【ポジション】遊撃手、右翼手
【主な打順】三番
【投打】右投左打
【身長体重】146㎝44㎏
【好きなプロ野球選手】大谷翔平(ドジャース)、柳田悠岐(ソフトバンク)
※2025年2月24日現在
「小学生の甲子園」こと全日本学童マクドナルド・トーナメントを2連覇中の大阪・新家スターズは、前年度優勝枠で今夏の出場が決まっている(4年連続5回目)。
その夢舞台に初出場したのが2017年で、当時の主将を務めていたのが竹添家の長男・雅樂。また同級生には、背番号28の吉野谷幸太コーチ(現監督)の息子もおり、聖地・神宮で入場行進している。
兄弟の夢も叶えた三男
竹添家の次男は2021年の府大会決勝で敗れて全国出場はならずも、阿波おどりカップで準優勝。そして半年前の2024年夏、5年生で唯一のレギュラーとして「小学生の甲子園」2連覇に貢献したのが三男の來翔だった。
2024年の全日本学童大会で2年連続2回目の優勝を果たした新家ナイン。写真上は左端が竹添
末っ子の三男坊は、生まれたときからチームぐるみで可愛がられてきたという。吉野谷監督も「自分の子みたいなもんですよね」と思いを馳せる。
「ライ(來翔)のことはもう、お母さんのお腹にいるときから知ってますからね。小さいときからお兄ちゃんにず~っと付いて回っていて、当たり前のようにウチで野球を始めて(2年生から)。やっぱり三男坊の図太さというのか、大舞台でもホンマに緊張していない感じでしたね」
竹添は世代でも随一の高みに登った。ただし、野球の腕前は兄2人にまだまだ遠く及ばない。母・亜希子さんによると、末っ子ゆえの奔放さもある一方で、兄たちの存在によって負けん気と向上心が刺激されながら育ってきているという。
「お兄ちゃんたちのハードルはかなり高いですね。いろんな大きな大会に行って活躍しても、家に帰ってくれば、お兄ちゃんたちからは厳しい一言、二言があったり。自主練でも厳しい言葉で教えられている部分もあります」(亜希子さん)
兄たちの言動はもちろん、弟を思えばこその兄心から。三男坊が抱く大きな夢を知れば、愛のムチはさらに増すのかもしれない。
「将来はプロ野球選手になりたいです。走攻守の全部がそろった、ソフトバンクの柳田選手(悠岐)みたいになりたいです」(竹添)
何でも器用にできるのが現時点の最大の魅力。可能性は無限に広がっていると言えるだろう。
抜かりなき走攻守
夏の全国連覇を遂げた新家は「百戦錬磨」を思わせる、安定した戦いぶりで群を抜いていた。走攻守のすべてが整っているので、相手や試合展開がどうあろうとも慌てず、大崩れもしない。すると相手のほうが根負けしたように、与四死球やミスから崩れていくことも多かった。
オリックスジュニアに選ばれた山田拓澄(現6年=卒団)を除けば、図抜けたタレントがいたわけではない。サク越えアーチを量産したり、奪三振ショーを演じるような怪物級の選手は、2年前の初V時もいなかった。
それでいて、どの選手も複数のポジションを堅く守れて、打席ではやたらにしぶとく、塁上でも気が置けない。昨夏はその象徴とも言えたのが、九番・右翼で全5試合にフル出場した竹添だった。
「得意なのは小技。バッティングは全国大会になったら調子が上がりました」
打率.455で二塁打1本、三盗もマークした。左打席から三塁線に転がすバント技術は一級品で、これで稼いだ安打や招いた敵失も複数あった。準決勝以降は無安打ながら3四球を選ぶなど、上位打線で得点するパターンに変わらず寄与。5年生にして、わがもの顔でプレーする様は頼もしく見えたが、実は初戦(2回戦)はガチガチだったそうだ。
「1個上の学年のチームやったので、エラーしたらどうしようとか考えて、緊張で体が固まっていました」
それでも、2安打に無失策で初戦を突破して以降は、楽にプレーができたという。ライトの広い守備範囲と球際の強さと強肩で、バッテリーをどれだけ救ったことか。
昨年12月の「冬の神宮」ポップアスリート杯全国ファイナルは決勝で敗れ、2年連続の全国3冠はならなかった。それでも竹添は、ヒットにすれば失点というピンチでライトゴロを決めるなど、随一の外野守備を披露している。
真打ちがトリを飾るべく
「今年は全国3冠で楽しい1年にしたいと思います。一番の目標はマクド(全日本学童)。3連覇になると史上初なので、そこを目指しています」
新チームで背番号10を授かった竹添は、先頭に立ってナインを引っ張る立場になった。ポジションは学年チームで経験してきている遊撃手、打順はポイントゲッターの三番を任されている。
「守備はライトのほうが好き。ショートも見せ場はあるけど、得意なのはライトです。課題はボクもチームもバッティング。バットのこと(新ルール)とか関係なく、ばんばんヒットを打っていけるようにならないと」
新6年生は6人。吉野谷監督は守備力の強化と作戦面の精度アップを掲げる一方で、息子のような新主将に寄せる信頼と期待は大きい。
「ライの素晴らしいところはいろいろありますけど、大舞台になったら活躍する。そういう物怖じせんところは、そのまま変わらずにいてほしいと思います」
期待も責任も感じている。プレッシャーもないと言ったらウソになる。そう打ち明ける竹添には、頼もしい味方が多いこともまた事実だ。
5年時からレギュラーとして全国2連覇。これをすでに成し遂げた前主将(=下写真右)は、10番を託した後輩へこのようなメッセージを寄せている。
「ライは生意気っちゃ生意気ですけど、こすいバントとか技術がめっちゃ高くて守備もうまい。作戦(エンドランやスクイズなどの戦術)とか、いつも決めてくれて頼もしいヤツでした。別にもう日本一になっているから、いろいろマイナスに考えるんじゃなくて、張り切ってやればいい。自分はそうしてきましたし、ライにもアドバイスするとしたらそういうことです」(藤田凰介・6年=卒団)
長男のときから10年以上、新家に携わってきた母もついに、学童チームの保護者としてラストイヤーを迎えている。
「もう長いことチームにお世話になってきましたので、私自身もやっとこれで終わりなんかなとホッとする気持ちもありますし、寂しい気持ちもあります。ライには5年生のうちに、いろいろと大きい大会に連れてきてもらっているので、6年生になっても、がんばってほしいなと思います」(亜希子さん)
竹添3兄弟の学童時代の足跡は、新家スターズの躍進にどっぷりと重なる。三男坊は果たして、チームを前代未聞の偉業へと導くか。先のことは誰にもわからないが、「3年連続日本一」という栄誉に挑める権利は全国で唯一、新家スターズにしかない。
(動画&写真&文=大久保克哉)
(写真=福地和男)